「分かりやすい説明」の技術 最強のプレゼンテーション15のルール ブルーバックス


報告すると、「逆に質問が返ってくるような人、聞き返されるような人、相手に逆に要点をまとめられちゃったりする人」、「説明がうまくなりたい人」などなどにはとってお勧めの本です。「プレゼン」もそうですが、単純な「報告」や「メール」にも非常に役に立つと思います。

プレゼンの中でも、「説明→分かりやすい説明」に重きを置いた本は初めて読みました。もっと早く読めばよかったと思う、とてもいい本です。
「分かりやすい」とはどういうことか?などを説明するために、「理解」の仕組みを非常にシンプルに論理的にまとめられています。


これまで、”プレゼン”というと、どちらかといえば、「プレゼン資料の作成法」などは読みましたが、本書は”説明”について書かれた本です。この本で得たことを、説明やプレゼンだけでなく、日々の報告や連絡にも活かしていきます。

各章の紹介

  • 第1章
    • 「分かりにくい説明」とは。
    • なぜ分かりにくいのか。
    • そもそも「分かる」とはどういうことなのか。
    • どうすれば「分かりやすく」説明することができるか。
  • 第2章
    • 『説明術・基礎編』として、簡単に実行でき、しかも効果が大きい7つのポイントを紹介。
  • 第3章
    • より細かな説明術。
  • 第4章
    • チェックポイントのリスト。

以下、内容のメモ。

「分かる」とはどういうことか

  • 「知らせる」と「説明する」の違いは、「知る」「分かる」の違いにある。相手を「知っている状態」にすることが「知らせる」。相手を「分かっている状態」にすることが「説明する」。
  • ここでは「分かる」の意味は「話しての意図を正しく理解すること」とする。
  • 「分かりやすい」=「話しての意図を正しく理解しやすい」とはどういう説明か?「分かりやすい説明」=『脳内関所を通過しやすい説明』である。
  • 短期記憶が処理される領域は、情報を一時的に留め、その情報を吟味し、意味を確定するため「仕分け場」。これを「脳内関所」と呼ぶ。
  • 長期記憶が保存される領域を「脳内整理棚」と呼ぶ。→脳内関所で仕分けができないために、脳内整理棚に保存できない情報が「分からない」「解せない」「腑に落ちない」ということ。

「分かる」までの流れ

1.サイズ審査(情報の大きさをチェックし、受け入れるか否かを決める。)
    1. 入ってくる情報の「一区切り単位」のサイズが脳内関所のサービスより大きいと、脳内関所に入ってくることができない。→【ビール瓶の原理
    2. ビール瓶の原理・・・脳内関所はビール瓶の小さな口で、ビール瓶の中は脳内関所。水(情報)をビール瓶の口に工夫なく注いでも、瓶の中(脳内整理棚)に効率よく水が入っていかない。水をビール瓶の中に注ぎ込むには、小さな口からあふれないように工夫し、慎重に行わなければならない。
    3. 電話番号のハイフン区切りのように、一区切りのサイズにすることでサイズ検査を通過しやすい。
2.たくさんある脳内整棚の中から適切な1個を選ぶ。(適切な整理棚の選定)
    1. 入ってきた情報について、まず大きなカテゴリが決定される。つまり、いくつもある脳内整理棚の中から、その情報の送り先として、もっとも適切な一個の整理棚を選び出し、準備する。例として・・・


郵便物仕分け用の整理だなが47個あるとする。情報は一通の郵便物。サイズ審査を通過→脳内関所を通過した後、最初に行われるこの仕分け作業は、一番大きな仕分け作業である都道府県の決定。ここで注意すべきは、本物の郵便物には住所が書かれているが、脳内に入ってくる情報には、住所が書かれていないという点。そこで脳内関所で、情報を吟味し、都道府県を決定する。

3.ポイントをつかむ。(情報整理・構造分析)
    1. ムダをカットしたり、同じ情報をまとめたり、情報の対応関係を発見したり、意味を失わない範囲で情報の構造を単純化する。
    2. この作業がある程度進んで初めて、「つまり、言いたいことは○○ってことか」となる。
4.論理性審査(情報が論理的であるかチェックする。)
    1. 「理にかなっているかどうかがチェックされ、不合理と判断されれば、その情報は拒絶され、脳内整理棚に進むことは許されない。「腑に落ちない話」「非論理的な話」「納得できない話」として拒絶される。
    2. この論理性審査機能の強い「論理的な人」は、人の説明の論理性審査に厳しいだけではなく、自分の情報発信にも同じ厳しい事前審査を行う。そのため、論理的な人が話す内容は、すでに論理性の事前審査をされたものとなる。それだけに聞き手の脳内関所での論理性審査で、合格と判定される可能性が高くなる。→説得力のがある。
5.意味の確定(情報を入れる脳内整理棚内の最終一区画を決定する。)
    1. 入ってきた情報の意味は、すでに脳内整理棚に格納されているかこの情報と照らし合わせ、もっとも情報の構造(意味)が一致する区画に格納される。もし過去に格納されたどの区画の情報とも一致しない場合は、「新しい概念」として、まったく新しい区画に格納される。→これが「分かった!」「納得できた!」という瞬間。
    2. 「分かる」とは、情報が最終的に脳内整理棚の一区画に入れられたこと。「分からない」とは、その情報が脳内整理棚に入れられなかったことを意味する。

その他いろいろ

脳内関所を取りやすくする。
  1. 脳内関所の負担が大きい説明は「分かりにくい説明」。脳内関所での作業負担が小さい説明は、分かりやすい説明。
  2. 「分かりやすい説明」とは、脳内関所で行われるはずの作業を、なるべく事前に代行処理し、脳内関所の作業負担を軽減すること。→説明はサービス。聞き手は「お客様」
タイムラグを知れ。
  1. 誰でも物事になれるまでは時間が必要。・・・【タイムラグ
  2. 下手な説明は、たいていこのタイムラグを認識していない結果。
最初に「理解の枠組み」を与えよ。
  1. 聞き手が行っている脳内整理棚の選定作業を手伝ってあげることがタイムラグの短縮となる。
  2. 選定作業をするさいに「理解の枠組み」を与えることが大切。→「概要をまず話す」「要点を先に言う」→これが、説明術で「まず概要それから詳細」「まず結論それから理由」とされるわけ。
  3. 聞き手は脳内整理棚の選定作業中のため、「どの都道府県なのかな?」、すなわち「どんな話が始まるのかな?「この人は何を言おうとしているのかな?」という情報をほしがっている。
  4. 聞き手の脳内整理棚選定作業に必要なのは、概要情報であって詳細情報ではない。説明する側にとっては当然過ぎる、ついつい省略しがちな概要をゆっくりと説明することこそが、聞き手の脳内整理棚選定作業を助ける最強の手段。
ビジネス文書、メールなどのポイント
  1. 読み手の時間を奪わないこと。
    1. 短時間で効率よく情報伝達しなさい、ということ。つまり「分かりやすい説明」をしなさい、ということ。
    2. 途中で相手が読むのを放棄した場合を想定し、重要情報を文のなるべく前へおくこともポイント。読んでもらいたい情報ほどメールの前に置くことで、読み手が途中放棄した場合の被害を最小限にとどめられる。
  2. 事実を正確に伝えること。
    1. 誤解されない表現を心がけるということ。
    2. 「分かりにくい説明」を生み出す多くの要因の中でも、とりわけ「曖昧な表現」は誤解の温床。
  3. 読み手にこちらの希望の行動を取らせること。
    1. 「最終目的」を忘れるなということ。
聞き手に合わせた速度
  1. ゆっくりじっくり。
  2. 聞き手の処理能力はバラバラ。しかし、ゆっくり話す方が理解できる人が多い。ハードルを飛び越えられる高さに個人差はあるが、ハードルを低くした方が飛び越えられる人が多くなるのと同じ。
  3. ビール瓶に水を入れるには、ゆっくり注ぎ込むこと。同じように説明も時間当たりの情報量を小さくする必要がある。「しみ入るように話す」こと。
  4. すべて「ゆっくり話す」わけではない。ポイントポイントで、聞き手の脳内関所が情報処理できるように間をおいて、次の情報を送ることを一瞬だけ控える。
  5. だらだら話すわけではない。情報を小さな塊にして送ること。
抽象的説明と具体的説明のバランスを取れ。

【具体的説明のポイント】

  • 1.意識して範囲指定せよ。
    1. 「なるべく」、「おおぜい」などはNG。


「なるべく早くに仕上げておきます。」(どれくらい早く?今日中?今週中?今月中?)
「この新しい機能によって、すごく便利になります。」(どう便利?)
「おおぜい集まると思います。」(10人?100人?1000人?」

  • 2.範囲を推測可能にする具体例を挙げよ。
  • 3.小分類で語れ。


NG:「緑のボタンを押せば、すぐに部屋の温度は快適になります。」
OK:「緑のボタンを押せば、2、3分で、あなたが設定した温度、湿度になります。」


NG:「大きな木を探してください。」
OK:「長さが15センチ、直径が10センチ以上の丸太を探してきてください。」


NG:「先生、きのうからどうも具合が悪いんです。」
OK:「きのう昼食後から吐き気が強くなり、夕方近くには、下腹部もさすような痛みがあるんです。熱もあるようです。」


  • 物事を理解するには、2つの視点がある。「部分」と「全体」。これは「具体性」と「抽象性」。どちらに偏っても健全な理解とはならない。
  • 仕事の細かな内容を全く知らない上司が、ポイントを2、3押さえた質問をするだけで、見落としていた重要な点を指摘してくれる。・・・近視眼的に見落としている点を、細かな内容や現状をまったく知らない上司が見逃さない。すなわち、「具体的視野」になっているのに対して、上司は「抽象的視野」になっている。
  • 「部分」を理解するのに必要なのが具体的説明。一方、「全体」を理解するのに必要なのが抽象的説明。
  • 「木を見て森を見ず」。説明術でいえば、木は具体的説明で、森は抽象的な説明。
  • 抽象的説明と具体適切目のバランスをほどよくとって、説明の途中で「全体」と「部分」の間を行ったりきたりすること。
  • 「類似性」を発見し、そのグループ分けをすることが「抽象化」。


たとえば、最近のパソコンの機能はどんどん豊富になり、そのソフトも次から次への新しいヴァージョンが販売されます。時間をかけてやっとワープロ表計算のソフトになれたと思ったら、もう新しいヴァージョンが販売されて、使い慣れたヴァージョンは時代遅れになってしまいます。新しいヴァージョンのソフトには、また新しい機能が満載されていて、単純な機能を使うだけなのに、かえって古いヴァージョンよりついかいにくくなっていたりもします。ユーザがほしがる機能を増やしているはずなのに、逆にユーザの不評をかっているわけです。
また、ある人は食物繊維が脂肪の吸収を防げると聞き、肥満体質を改善しようと、オカラをよく食べるようになりました。おからは食物繊維の含有量が多いからです。最初は、週に2、3度夕食時にオカラを一品加えるだけだったのですが、早く効果をあげたいと、3度3度の食事のたびに大量のオカラを摂るようにしました。ところがある時、勤務中に激しい腹痛のため、救急車で病院に運ばれたそうです。原因は食物繊維の取り過ぎでした。

・・・何の関係もないような2つの話ですが、抽象化すれば「過ぎたるは及ばざるが如し」という1つのグループにまとめることができる。「○○」はいいことです。悪いのは「過ぎる」ことです。

説明漏れを防ぐ。
  • 1つ目・・・「他人の目」を利用する。「分かりにくい説明」とは、当然、しなければならない説明を省いてしまった場合。とはいえ「分かりきったこと」を説明してしまうのも、時間の浪費。聞き手を不快にしてしまう点では、どちらも同じ。「説明相手によって、説明を省ける箇所は異なる」という単純明快な原理も、改めて指摘されない限り、はっきりと意識されない盲点。
  • 2つ目・・・「自分の視点を動かす」。聞き手の立場になる。
説明は「情報の調理」
  • 説明とは、「情報を”ただ”与えるだけではなく、情報を事前に整理、加工して聞き手に渡す。」こと。情報を”ただ”与えることは、「説明」ではなく「通知」。情報をただ与えるだけでは、レストランで、食材を調理せずにお客様にだすようなもの。
  • 脳内関所の作業負担軽減は「分かりやすい説明」にとっての根源。説明する情報を事前によく整理してから話せば、当然、聞き手の脳内関所の作業がそれだけ軽減され、情報を分かりやすく脳内整理棚に入れられる。
  • 情報をどのように「調理」したら「分かりやすい説明」になるか?脳内関所の中核作業である「情報整理・構造分析」を事前に代行すること。脳内関所での「情報整理・構造分析」の負担軽減こそが「分かりやすい説明」の鍵。
重複やムダのない説明
  • 「情報の構造を浮かび上がらせる」ことが秘訣。


NG:この商品は男性でない方々、かつ年配でない方々に最適です。
OKこの商品は若い女性に最適です。

・・・これは極端な例だが、『同じことを意味するもっとも単純な情報構造で説明しなさい」ということ。

  • 誤解が入り込む余地をなくすこと。「主語と動詞」「修飾語と被修飾語」などの関係を明確にする。
分かりやすい文章の原則。
  1. 「読み手」の前提知識を考慮せよ。
  2. まず、概要説明を行え。
  3. 適切な情報サイズを守れ。
  4. 複数解釈を許すな。
    1. 主語がどの動詞に対応するかを明確にせよ。
    2. 代名詞がどの語を指しているのかをを明確にせよ。
    3. 形容詞がどの名詞を修飾しているのかを明確にせよ。
    4. 副詞がどの動詞を就職しているのかを明確にせよ。
  5. 情報構造を明示せよ。
    1. 対等な項目は箇条書きによって明示せよ。
    2. 親子関係の項目は、大項目、小項目をそれぞれ明示せよ。
    3. 読点で構造上の区切りを明確にせよ。(「一文を短くする」ことによって、文章がスムーズに飲み込みやすいものになり、脳内関所の「サイズ審査」を順調に通過できるようになる。)
キーワードを使え
  • ある事象を一言で言い表せないか?本説明で使用している「ビール瓶の原理」や「脳内関所」などのように長い説明が必要なものをキーワード化することにより、説明、理解が早くなる。
  • キーワードは言葉の取って。大きな荷物も、小さな取っ手をつけただけで持ち運びしやすくなる。
詰め将棋
  • 理論武装をする。リハーサルをする。聞き手の心理を想像しながら「こう反論してきたら、こう説明する」というように何度も想定問答を行う。
  • 聞き手がどう応戦してきても、必ず自分の説明を納得させるシナリオを作る。・・・相手についての事前知識が必要。
  • 理論武装のためのポイント。
    1. 一つ一つの説明に「裏づけ」を用意する。
    2. すでに納得してもらえた説明は、別の説明の「裏付け」に再利用する。
説明の弱点から注意をそらす方法
  1. 弱点部分の説明は、「タイムラグ」を使って、なるべく冒頭で聞き手の視野がまだ暗いうちに済ませてしまう。
  2. 弱点部分の説明には、あまり時間をかけずに早口で説明する。
  3. 弱点部分の説明の直後に、逆に「強固な裏付けがあり、かつ、聞き手が関心を持ちそうな話題」を説明する。
  4. 弱点部分の説明に、「正しいと広く認められている、一見似て非なる別の話を比ゆとして使う。
比喩を使え
  • 「分かりやすさ」に欠かせないもの。
  • 比喩とは、一見まったく異なる事柄を「その本質において同じ」ことを示すこと。
  • 「これから私が説明しようとしている事は、あなたが既にしっている”あの例”と同じですよ」ということ。よって、比喩はその情報を脳内整理棚のどの意味別区画に格納すべきかを、初めから指示してくれる「住所ラベル」。よって、仕分け作業が早くなり「すぐに分かる」「よく分かる」のは当然。
  • 比喩の下手な人は、自分がする説明を。その核心が明確になるほどまで分析、整理できていない人。自分の説明の核心をつかんでいるなら、同じ核心を持つ有名な話、歴史上の話、ことわざを思いつくことができるはず。
  • 日々体験することに対し、一つ一つその本質を考え、噛み砕き、自分の脳内整理棚にきちんと格納しておくこと。そうすれば新しいことも「本質においては、過去のあれと同じだな」と比喩を思いつくことができる。「丁寧に整理して格納しておけば、直ぐに取り出せる。」という単純な原理。
聞き手に問いかける。
  • 聞き手に問いかけるのは、説明内容を聞き手にハッキリさせる点で非常に有効な手段。
  • 「後」の質問・・・「復習効果」「まとめ効果」がある。
  • 「前」の質問・・・「キーポイントの予告」「次に続く情報の概要説明」という2つの役割によって、それ以降の説明に対する聞き手の理解能力を飛躍的に高める。ただし、乱用すると効果が薄まるので注意が必要。
  • 「まとめ言葉」・・・脳内関所で住所がほぼ決定されつつある状態のときに「ダメ押し」となる。「要するに・・・」「何が言いたいかといいますと・・・」「つまり・・・」「誤解していただきたくないことは・・・」「結局・・・」など。
説明は引率
  • まずは全体像を示す。
  • 節目節目で「これから話すことの概観」を与える。・・・「脳内整理棚の選定」を助ける。
  • 「冒頭で概説を話す」ことは、これから先の全工程がどれほどなのか、の「展望」「見通し」を与えること。人は「展望」を持てない「迷った状態」「この先どうなるか分からない状態」を嫌う!!!!不快感、不安感を少なくすべき!!!!
  • 「知って待つ」のと「知らないで待つ」のとでは不快感において、点と地ほとの開きがある。人は常に展望を持っていたい。
  • これから先の全体像を与え、説明中も時々「現在地」を教えてあげること・・・WEBのページも同様。サイトマップ、パンくず・・・
  • 説明の最中、引率の気持ちを忘れないこと。
「見出し」をつける。時間を守る。
  • 脳内整理棚の各区画に貼られているラベルが「要点」。
  • 限られた時間で適切な説明をする秘訣は、自分の説明に大見出し、中見出し、小見出しを振っておくこと。時間の余裕がないときは大見出しだけをザッと話す。
  • 自分の説明全体の中から、本質を抜き出し、見出しを付けておけば、状況に応じて適切な説明ができる。
  • 「要約力を磨く」・・・物事の本質をよく理解するように努めること。自分が本質を理解していない事柄を、他人に「分かりやすく説明する」秘法などない。
  • 事前に示した開始時刻と終了時刻を守ることは、最低限の品質保証義務。
聞き手に合わせた説明をせよ
  • 説明内容のの事前公示も重要。聞き手に合わせなくては無意味。
  • 聞き手が誰かを確認する。相手によって説明の仕方を変えよ。
  • 事前に聞き手の人物像を想定することで、”明確な基準”で点検作業ができる。「誰にとっても分かりやすい説明」というものは存在しない。
隠して届ける。
  • 拒否、拒絶が予想される説明の場合、聞き手が嫌がるポイントをとりあえず隠し、話しての意図を聞き手の脳内整理棚まで届けてしまう。やさしい言葉などによって。
  • 不快感を和らげる。・・・「馬の足は三本である」と信じている人に「馬の足は四本」であることを説明するにはそれなりの工夫が必要ということ。


説明が下手な人は、
「馬の足が三本?バッカじゃねーの!赤ん坊でも知ってるぞ。」
説明が上手な人なら、
「そうですよね。馬の足は三本ですよね。ところが最近妙な体験をしました。この前、あそこの草原を通ったら、もしろん大部分の馬の足は三本だったのですが、中には時々、四本足の馬をみつたんです。馬の足は三本と決まっているのに、四本足の馬もいるのかもしれませんね。今度、馬を見かけたら四本足の馬がないか探してみてください。」

・・・露骨に聞き手のプライドを傷つけない。これも重要。

聞き手が不快に思うこと。
  1. 関心のない話を聞かされる。
  2. 早口で分かりにくい。
  3. 声が小さくて聞きづらい。
  4. 暑い(寒い)。
  5. 飽きる。
  6. 時間がムダ。
  7. 理解できないと恥をかくのでは。
  8. 説明がうんざりするほど長い。
  9. バカバカしい。

「分かりやすい説明」のチェックポイント

1.タイムラグの存在を知れ。
  1. ★聞き手が脳内整理棚を準備中はゆっくり話すなどして待て。
  2. ★聞き手の脳内整理棚がいつ準備完了するかに注視せよ。
  3. ★聞き手の脳内整理棚の準備が完了してから情報を送れ。
2.タイムラグを短縮せよ。
  1. ★概要を先に与えよ。
  2. ★聞き手の脳内整理棚選定作業を詳細情報で妨害するな。
3.「間」をおきながら、しみ入るように話せ。
  1. ★意味別の区切りごとに小休止を取れ。
  2. ★キーポイントを話した直後に小休止を取れ。
  3. ★複雑な概念を話すときは小休止を多用せよ。
4.具体性と抽象性のバランスを取れ。
  1. ★意識して範囲指定せよ。
  2. ★範囲を推測させる具体例を挙げよ。
  3. ★大分類でなく、小分類名で語れ。
  4. ★全体説明と部分説明との間を適宜、行き来せよ。
5.説明漏れにきずけ。
  1. ★第三者に事前チェックをしてもらえ。
  2. ★聞き手の立場を想像せよ。知れ。
6.情報構造を浮かび上がらせよ。
  1. ★重複、ムダを整理せよ。
  2. ★大項目、小項目の関係を明示せよ。
  3. ★対比関係、同列関係を明示せよ。
  4. ★キーポイントを添えよ。
7.キーワードを使え。
8.論理的な主張をせよ。
  1. ★主張の裏付けを用意せよ。
  2. ★承認済の主張は「新しい裏付け」として再利用せよ。
  3. ★分かりやすさの障害となる非論理的な弱点部分は隠せ。
9.聞き手が知っている事例にたとえよ。
  1. ★格言、ことわざを普段から仕入れよ。
10.聞き手の注意を操作せよ。
  1. ★要点を話す前に「問いかけ」で注視させよ。
  2. ★「まとめ言葉」で聞き手の整理を助けよ。
11.聞き手を引率せよ。
  1. ★常に聞き手に展望を与えよ。
  2. ★聞き手が落伍していないか気配りせよ。
12.繰り返しの劣化に注意せよ。
  1. ★聞き返されたら要注意。
  2. ★聞き手は「今日、初めて聞く」ことを忘れるな。
  3. ★「伝える」気持ちを取り戻せ。
13.持ち時間を守れ。
  1. ★要点力をみがけ。
  2. ★説明内容を大、中、小の見出しに整理しておけ。
14.聞き手にあう説明をせよ。
  1. ★聞き手の持っている事前知識を知ってから説明せよ。
  2. ★説明内容を事前に正しく知らせよ。
  3. ★聞き手に、必要な前提知識を事前に正しく示せ。
15.聞き手を逃がすな。
  1. ★聞き手の不快感を解消せよ。

以上。