プロマネはなぜチームを壊すのか 知っておきたいプロジェクトのヒューマンスキル

プロマネはなぜチームを壊すのか 知っておきたいプロジェクトのヒューマンスキル

プロマネはなぜチームを壊すのか 知っておきたいプロジェクトのヒューマンスキル

「優秀なプロマネより、本物のプロマネ

やはり、「コミュニケーション」が大事だということを痛感させられました。
本書は、マネジメントのための「銀の弾丸」や「真新しい手法」が紹介されているわけではありません。QCDを守るための、体系的な手順が書かれているわけでもありません。プロジェクトの成功を目的とした場合に、プロジェクトマネジャーが”人として”すべきこと(手段)、そこにとことんスポットを当てた内容です。


ですので、プロジェクトマネジャーの立場の人だけでなく、チームのメンバー、リーダ的な役割の人、一度は読んだほうがいいと思います。特に、これからチームをまとめていく、または、そういった立場になりたい人は必読の1冊です。


きっと皆さんが経験した、または見たことがあるような事態が、例としてたくさん記載されており、悪い例と対比させながら、分かりやすく書かれています。2〜3時間でサラッと読めます。
実例が多いため、イメージしやすく、説得力があります。


以下、メモ。

第1章. チームのパフォーマンスとプロマネの「責任」


今現時点で、プロマネでない人も、いつの日か、突然任命されることもあるだろう。「できたてホヤホヤ」で、準備も心構えも十分でないプロマネが、いきなり前線に放り込まれることも少なくない。そんな人が成功できるかどうかは、それまで経験のなかった「リーダー」たるプロジェクトマネージャーのスキルを、いかに早く吸収できるかどうかにかかっている。プロマネだけでなく、何事も「準備期間ばっちり」で何かを任されることは少ない。むしろそれが当たり前。いかに「自分で意識して準備するか」が勝負の分かれ目だと思う。
PMBOKを学んで、プロジェクトマネジメントの知識体系を身に付けた技術者の数は、近年急速に増えている。ただ、プロジェクトマネジメントの知識を習得しても、リーダーとしてプロジェクトチームを率いていく「人間的」な能力が、身に付くわけではない。こうしたプロジェクトマネジャーの人間的スキルは、プロジェクトを遂行する現場での経験を通じてしか学べないことが多いからだ。しかも、上司を含め誰かがそのようなスキルを、手取り足取り教えてくれる機会もなかなかない。

プロジェクトチームの崩壊とは
  • ミスや失敗などを指すのではなく、「プロジェクトを成功させる上で必要な、チームとしてのパフォーマンスがない状態」と定義する。
  • 最終段階のどうしようもない状態に至る前の「崩壊」のスタート局面なら、プロジェクトマネジャーがそれを正しく認識できれば、何かしら打つ手がある。
  • チームとしてパフォーマンスに欠ける状態を軌道修正し、チームとしてのパフォーマンスを引き上げることは、プロジェクトマネジャーの責任。
  • チームの崩壊を上記のように定義した場合、「壊れた」チームの多くは以下のような状態に陥っている
    • メンバーそれぞれが自分の業務以外について協力しようとしない(つまり、チーム編成のメリットが出ない)
    • プロジェクトの結果に関して、メンバーが無関心
    • プロジェクトの成功が何を意味するかをメンバーが知らない、または無関心
    • メンバーが自分以外に興味がない
    • 他のメンバーの改善点に気付いても話をしない
  • チームの崩壊はプロジェクトの成果物に対してだけ影響があるのではない。メンバーの心を蝕むこともある。精神的ダメージを受けた場合、家族にも犠牲を強いることになる。組織としても、貴重な人材というリソース(経営資源)を最大限に活用できないこととなり、組織のパワーを下げることにつながる。
崩壊の2つのパターン
  • プロジェクトチームの崩壊には、次の2つのパターンがある。違いを認識する必要がある。
    • A:プロジェクトチーム発足時からすでに崩壊した状態の場合
    • B:プロジェクトの進行に伴い、ある時点から崩壊が進行していく場合

  • 後者(B)の途中からの崩壊は、プロジェクトがある時点まではチームとしての良さを発揮していたものの、ある時点を境として、チームが崩壊への悪魔のスパイラルに巻き込まれていくものを意味する。1人のメンバーから伝播していく場合と、複数のメンバーかの問題が同時に起こる場合がある。この場合は、リーダーが適切な対応をして問題の小さな目を摘んでおけば、崩壊は避けられたかもしれない。
新任プロマネのジレンマ

では、業務優先?モチベーション?両方大事?

文書化されたものだけが責任範囲ではない
  • 各組織でプロジェクトマネジャーの「役割」や「責任」についてどんな記述がされているか?例えば、下記のようなもの。
    • プロジェクトを成功させる責任者
    • プロジェクトチームに対しての指揮
    • プロジェクト計画書を作成すること
    • 予算内で要求された品質のものを納期内で作り上げること
    • コストダウン案を作成し、実施すること
    • プロジェクト報告書を作成すること
  • 上記以外にもいろいろあるはず。仮に世の中のプロジェクトマネジャーの責任として記載され手入る項目を集めて、それらを全部実行しようとすると、小学校の「ムカデ競争」のような統制のとれない動きになってしまい、現実的ではない。
  • プロジェクトマネジャーの「役割」や「責任」の記載項目をいくら眺めても、何が本当に求められているかは、いまひとつ分からない。
  • プロジェクトマネジャーの責任が、組織として依頼事項を明確にする上で重要なものだし、できるだけ明確化されるべきものだが、それだけで十分といえるものではない。プロジェクトマネジャーの責任は、文書化された公式のものだけではないからだ。
責任はその人の内面に存在する
  • 記載されている「責任」の箇所をいちいち参照したりしながら仕事を行うプロジェクトマネジャーは、ほとんどいないだろう。「記載していないから、この仕事は自分の責任ではありません」と言えるものでもない。


要するに、プロジェクトマネジャーの責任とは、プロジェクトマネジャー自身の内面に存在するもの。どこまで責任があるかという本人の認識である、ということになりそう。優秀なプロジェクトマネジャーと言われている人とそうでない人では、この認識に差がある。

「責任」の本質とは
  • プロジェクトマネジャーの責任を明確に定義することは難しいようだ。枝葉を落として少しシンプルに考えてみる。


プロジェクトマネジャーの責任とは「プロジェクトを成功させること」

  • 責任とは?国語辞典で調べると・・・
    • (1)自分が引き受けて行わなければならない任務。義務。
    • (2)自分がかかわった事柄や行為から生じた結果に対して負う義務や償い。
    • (3)法律上の不利益または制裁を負わされること。協議では、違法じゃ行為をした者に対する法的な制裁。
  • (3)はプロジェクトマネジャーの責任ではない。(1)は立場から発生する義務を意味する。(2)は結果に対しての責任を意味している。
結果責任」の本当の意味
  • 結果というのはプロジェクトが終了して分かるもの。つまり、「未来」に対してのこと。

では、今は何ができるか?

  • 今できることは、成功という「結果」をもたらすために、その時点での最適な判断や行動をすることしかない。成功という結果に結びつくための、判断や行動をすることが真の責任。
  • 要するに、その時点その時点での、判断や行動が適切であるか否かが問われる。


プロジェクトマネジャーは、結果に対して責任があるがゆえに、プロセスに対して正しい行動をとる責任がある。

ここで大切な点は、「何が成功であるのか」が明確でないと、当然正しい判断も行動も存在しない。なので、成功基準を明確にしておく必要があり、プロジェクトマネジャーはチームメンバーや関係者に説明するべき。

と、ここまで考えて、先述の「業務優先?モチベーション?両方大事?」を考えてみる。
判断ポイントは次のようになる。


プロジェクトマネジャーは、プロジェクトの成功に対して必要なことを行う責任がある。プロジェクトマネジャーは、メンバーのモチベーションを考慮したほうがプロジェクトの成功確率が向上する、と判断するのであれば、そのように行動する責任がある。

プロジェクトマネジャーに重要なのは「戦略的」視点
  • ここで認識しておかなければらなないのは、成功確率が向上するのに役立ちそうなことを全て行うことはできない、ということ。さまざまな制約(時間や予算などの経営資源など)のため。
  • そこでプロジェクトマネジャーに必要になるのが、「戦略的視点」。
  • 戦略的視点とは、


複数の選択肢の中から、目的にとって最善と考えられる選択肢を選んで実施する、判断力を意味する。プロジェクトの場合、成功に役立つと考えられることを1つではなく複数挙げて、それらを検討したうえで、最も適切な選択を行うことが大切。

成功のために「選択」をしなければならない
  • 理想的なことを全て完璧に実行できる人はまずいない。それはプロジェクト自体が期間限定であり、利用できるリソースも有限だからだ。
  • 大切なことは、プロジェクトマネジャーはプロジェクトの成功のために、「選択」をしなければならないという現実。
  • 何かの選択をするためには、判断基準が必要。


プロジェクトマネジャーの判断基準は、「プロジェクトの成功確率が向上するかどうか」ということ。

プロジェクトチームのパフォーマンスが高いほうがよい。

そのために起こす行動は全て、プロジェクトマネジャーの仕事の一環。

プロジェクトマネジャーがチームのパフォーマンスを考慮するようになればなるほど、メンバーが快適に仕事を行うことを優先させることとなる。

プロジェクトマネジャーに与えられる「権限」とは
  • 文書などに書かれているもの(公式なもの)として、例えば次のようなものがある。
    • プロジェクトの実施に監視、顧客や会社関係に対して会社の代表として香料や連絡を行う責任になる
    • ある程度内の金額の発注に関しては、他社の承認なく決定を下せる
    • 選任のプロジェクトメンバーの作業分担に関して、決定を下すことができる
    • 機能部門マネジャーに対する人員の要請や、メンバー選定に関する承認や拒否ができる
    • プロジェクトの計画を立て、予算処置の取られたリソースの配分と利用を決めることができる

以上を見た上で、次の問いにを考えてみる。


「プロジェクトマネジャーに与えられる公式の権限で、メンバーやプロジェクト関係者に、(プロジェクトを成功させる上で)必要な影響力を、本当に与えることができるのか?」


YESであるなら、すなわち、公式の権限だけで人や組織に影響力を与えることが可能ならば、必要なことを全てプロジェクトマネジャーの権限として文書化すれば、それで済むこととなる。そのようなことはありえない

権限を行使する相手は「物」ではない
  • 権限を公式文書で定め、それを組織が認めても、その通りにメンバーが動いてくれるものではない。プロジェクトマネジャーが権限を行使する相手が「物」ではなく「人」だからだ。
  • 「本」は、加えられた力を受け入れるかどうかの意思を持たないし、逆らったりしない。
  • 人は、いくらプロジェクトマネジャーが指示して力を加えてみたところで、相手にそれを受け入れる医師がなければ、動くことはない。これが「人」と「物」との違い。


受けてがプロジェクトマネジャーの力を「力」として認めない限り、本当の意味での「力」にはならない。

公式の権限は小さいが、非公式な別のパワーがある
  • プロジェクトマネジャーの公式の権限は、むしろ小さいのが普通。なぜなら、役員や部長のようなラインが持っている地位に基づく影響力を、一般には保有していないから。

  • プロジェクトマネジャーの人や組織に対しての影響力(パワー)は、公式に与えられたものだけでは不十分。

  • 「プロジェクトマネジャーにはろくな権限がない」とか「公式の権限は特に規定されていないので、プロジェクトメンバーに影響力を行使できない」などと思ったり、感じたりするのは間違い。

  • プロジェクトマネジャーにとって、最も大切で有効なパワーは、公式に与えられるものではなく、プロジェクトマネジャーの実践能力に関係するもの。

  • 例えば、次のようなものが非公式なパワー。
    • メンバーや関係者との間で協力関係や依存関係を作り出し、それを維持していく能力
    • 機能部門との対立を調整していく能力
    • プロジェクト遂行に関する関係者からの信頼

つまり、プロジェクトマネジャーのパワーは、組織から与えられる公式の権限とプロジェクトマネジャー自ら獲得する能力による非公式なパワーで構成される。


プロジェクトマネジャーの影響力が、公式な側面と、実績や人格・リーダーシップ力などのヒューマンスキルに関係する非公式な側面の両方で構成されること、そして後者のほうが影響力が大きい、という点の認識が重要。

公式の権限から派生する「情報力パワー」
  • プロジェクトマネジャーの公式の権限から派生するパワーに、「情報力パワー」というものがある。
  • プロジェクトマネジャーは、プロジェクトに関する最新の情報が集まることから生じる、ある種のパワーを持つことができる。
  • 最新の情報がないとパワーは落ちる。
  • 「情報力はパワー」と言える。


プロジェクトマネジャーは最新のプロジェクトに関する重要な情報を、誰よりも早く入手できるコミュニケーションチャネルを作っておくべき。
また、プロジェクトメンバーも、プロジェクトマネジャーにはできるだけ情報を迅速に伝える義務があるということを認識しておくことが重要。

第2章. チームの特徴と本質について考える

一口にプロジェクトチームと言ってもさまざまな形態がある
  • プロジェクトチームは、目的達成志向の期間限定組織。
  • プロジェクト遂行組織の種類と特徴として次のものがある。


  • 一般にプロジェクトチームには次のような特徴がある。
    • チームには達成しべき明確な目標がある
    • 2人以上で構成されている
    • 相互関係がある
    • プロジェクトが終了すれば解散する
    • 1+1が2とは限らず、3や4、場合によっては1になったりする
    • チームは静的な組織ではない
チームの本質とは何か
  • 自然発生的にできあがるものではなく、組織を作る人間の意図で構成が決まるもの。家族のような組織とは当然異なる。
  • プロジェクトチームはプロジェクトの目的を達成するための手段。
  • チームは決して固定して考えるものではなく、プロジェクトの目的を達成できるように作り上げるもの。これがプロジェクトチームの本質。
  • チーム編成は次の事項を考慮して行う。
    • プロジェクトチームの目的は何か
    • プロジェクトの成果物は何か
    • プロジェクトの戦略的重要性はどのくらいか
    • どこでプロジェクトが遂行されるか
    • どのようなスキルのメンバーが必要なのか
    • チーム以外の組織とどのような関連があるか
  • チームを構成するのは生身の人間であるため、当然チーム内の人間関係や仕事の内容など様々な影響を受け、パフォーマンスも変化する。
  • プロジェクトマネジャーはプロジェクトチームを効果的に運営するため、次のこをを考えておかなければならない。

    • プロジェクトメンバーの役割と責任範囲
    • プロジェクトの成功と個人の成功
    • チームのインセンティブ
    • プロジェクトの進行に伴うチームの役割の変化


チーム形態もいろいろな種類がある
  • ステファン・P・ロビンスは『組織行動のマネジメント』で、チームを次の3つに分類している。
    • 問題解決型チーム
    • 自己管理チーム
    • 機能横断型チーム
  • 各自が所属している、あるいは所属した経験のあるチームは、どの形態にもっとも近いかを考えること。
    • 問題解決型チーム :同じ部の5人から8人の従業員で構成され、毎週数時間集まって品質改善、効率などを話し合うチーム
    • 自己管理チーム :10名から15名で構成され、メンバーは上司の担っていた責任をチームとして請け負い、解決策を実行し、結果にも責任を持つ、自己管理までを責任範囲としたチーム
    • 機能横断型チーム :組織内の多様な分野の専門家で構成される、あるタスクを遂行するためのチーム。クロスファンクショナルチームとも言う
チームの適正人数は?
  • プロジェクトマネジャーにとって管理できる人数は10人前後まで。


理由は、経験から10人を超えるとパフォーマンス評価が自らできなくなるから。また、ステファン・P・ロビンスは『組織行動のマネジメント』の中で12人以下が効果的なチームの人数であると述べている。

  • よって、対規模プロジェクトでチームの人数がどうしても多くなってしまう場合には、適正人数のサブチームに分割する必要が出てくる。
  • 最少人数は3人。意見が対立したとき2人だと1対1。3人だと多数決でどちらかに決めることができる。「三人寄れば文殊の知恵」。
相互依存関係を明示的に示す責任がある
  • チームメンバーは、自分に割り当てられた業務を行うと同時に、他のメンバーとの関係を持っている。
  • 自分の仕事は他のメンバーの業務に関係し、他のメンバーの業務に自分の仕事は関係する。
  • チームメンバーは自分の仕事が他のメンバーや他の部署とどのような関係を持っているかを明確に把握しておかないと、正しい業務遂行ができないこととなる。


プロジェクトマネジャーは、プロジェクトメンバーや関係者を含むプロジェクト全体の相互依存関係を、明示的に示す責任がある。

メンバーを含む関係者も、各人と周りとの業務上の関係を正しく把握しているかを自問することが必要。それが不明確だったり自信がなかったりした場合には、プロジェクトマネジャーに確認することが必要。

依存関係を可視化させる
  • プロジェクト関係者の業務の責任感系を明確にするのに役立つのが、RAM(Responsibility Assignment Matrix : 責任分担表)と呼ばれる表。
  • 以下、RAM(責任分担表)の一例。


パフォーマンスは静的ではなく、成長・停滞・崩壊のいずれかの状態にある
  • プロジェクトの終了とともに解散するという性格上、長い時間をかけてメンバー同士の信頼関係や人間関係を構築していくという時間的余裕はない。
  • できるだけ早くチームメンバーとして効果的に行動できるようにしなくてはならない。
  • プロジェクトマネジャーはなりゆきに任せるのではなく、意識してチームとしてのパフォーマンスを向上させるように努めることが大切。
  • ここで覚えておくべきことは


チームはパフォーマンスの面で静的な組織でないこと。チームは成長しているか、停滞しているか、崩壊しつつあるのか、いずれかの状態にあるものであり、また、それが時間と共に変化してもいく。

プロジェクトマネジャーは、チーム状態が常にへんかしていくことをまず認識すべき。それがチームを良くする上での最初の一歩。

生産的なコンフリクトが全体のパフォーマンスを引き上げる
  • 誰か1人が自分の責任をきちんと果たせないと、全体のパフォーマンスが低下する。たとえば、Aが100、Bが100、Cが70では、AとBがCに影響を受け、単純な合計の270より低いパフォーマンスになってしまう。→ 負のシナジー効果
  • 逆に「生産的なコンフリクト」があり、正のシナジー効果があると各人のパフォーマンスが120まで上がることがある。
  • 生産的なコンフリクトとはどんなものか?


それは仲良しグループのなれ合いミーティングではないし、対立するだけの議論の応酬でもない。

たとえば、お互いを高め合う建設的なコメントの応酬で、新しいアイデアが生まれることがある。それが「生産的なコンフリクト」である。

パフォーマンス低下を放置するプロマネは責任放棄
  • チームはパフォーマンスは静的でなく、成長・停滞・崩壊。時間的に変化していく。
  • チームのパフォーマンスを向上させるのはプロジェクトマネジャーの責任。
  • チームが崩壊しつつあるのに手をこまねいていたりするのは、プロジェクトマネジャーが責任を果たしていないことになる。
  • プロジェクトマネジャーは「自分のチームはうまくきのうしていない」とか「与えられたチームなのでどうしようもない」などと不満を述べることがある。不満があるのはともかく、そう言うだけで済ましてしまうのは、「自分は責任を果たしていない」と言っているのと同じ。プロジェクトマネジャーは、プロジェクトの成功という結果に向けて、プロセスに対して正しい行動をとる責任がある。

チームのパフォーマンスというのは具体的に何のこと?抽象的で言葉でつかみどころがないようなものに感じるが、何かの尺度で測れる?以降では、こうした点を踏まえ、メンバーおよびチームのパフォーマンスについて検討していく。

第3章. 言葉のパワーとメンバーのモチベーション


本章では、チームのパフォーマンスに対し、どんな要因が影響を与えるかについて検討していく。

言葉は単に情報を伝えるだけでない
  • 言葉は単なる情報を伝える記号ではなく、勘定にも影響を与えるものであることをよく理解すべき。
言葉は「パワー」である
  • プロジェクトメンバーとして「このプロジェクトはお前にしかできない」とリーダーに言われ、力が湧いて頑張った経験のある人もいるはず。
  • 逆にマイナスの影響を与えることもある。
  • 言葉は、個人や組織のモチベーションに影響を与える。影響の与え方は単純なものではなく、いろいろな要因に左右される。

「モチベーション」という言葉は、最近良く耳にするし、日常会話で使われるが、本当のところどういう意味なのだろうか?

モチベーションとは何か
  • モチベーションという言葉は、一般に次の2つの意味で使用される。
    • 動機を与える刺激や誘因、動機付け
    • 動機付けをして、意欲を起こさせること
  • 最初の内容は、「目標に向かって行動を駆り立てるもの」という意味。「仕事を頑張ろう」という気持ち、すなわち「やる気:を引き起こすための、何かの誘因を意味する言葉。たとえば、「彼の仕事のモチベーションは帰りに一杯やることだ」とか「ボーナスの増加が仕事のやる気を維持させるモチベーションだ」など。
  • 2つめの内容は、平たく言うと「やる気:を意味する言葉。たとえば、「モチベーションが上がった」という時には、この意味で使われている。
  • 言葉はモチベーションを上げたり下げたりする刺激の1つ。
言葉はありきたりでも「信頼関係」でモチベーションは上がる

※本書の付録に、研修の受講生に対して実施した「モチベーションの上がった/下がった言葉や状況」についてのアンケートの回答が書いてある。

  • モチベーションが上がった言葉。
    • 感謝やねぎらい
    • プラス評価
    • 信頼
    • 「君しかいない」
    • 賞賛
    • 期待感
    • 上司の理解
    • 前向きな姿勢
    • 的確な指導
    • バックアップ
    • 格言
    • 顧客などの対応
  • 逆に信頼関係がなければ、同じ言葉を使ってもうまくいくとは限らない。→信頼関係ありき
チームを壊すリーダーの言動とは
  • 次にモチベーションが下がった言葉。(もちろんこれらも信頼関係や状況による。)
    • 嘘つき
    • 脅迫
    • コミュニケーション不全
    • 仕事の実態に無理解
    • 頭ごなしの叱責
    • 侮辱的言動
    • 責任転換
    • 低評価
    • 「とにかくなんとかしろ」
    • やる気欠如
    • 否定するだけ
    • 無責任
    • 無内容な激励
    • リーダー失格
    • 理不尽
発言には、文字に現れない要素がからむ
  • 注意すべきは、その時の口調や会話の流れ、上司との関係など、文字には現れていない、いろいろな要素がからんでいる可能性があるということ。
言葉でパフォーマンスが低下し、チーム崩壊の引き金に
  • モチベーションが下がる言葉を言われたときの、当人のパフォーマンス(仕事を遂行する能力)の低下を、平常時を100として数値で答えてもらった。アンケート結果を集計すると、単純平均で、
    • 平常時の39%にまでパフォーマンスが落ちるという答えが得られている
    • 低下時のパフォーマンスは最高で80%
    • 最低ではマイナスのパーセントを答えた人もいる(プロジェクトの足を引っ張った振る舞いをした?)
  • 上記数値は単なる主観で、平均することに、どれだけ意味があるかはよくわからないが、言葉によってパフォーマンスが平均約6割も低下すると、当人たちが実感していることは事実。


言葉の使い方は、チーム崩壊の引き金になる

やる気の上がる言葉を真似するのは無意味
  • 先述のモチベーションが上がって言葉を真似て、明日から使用するというようなことは、あまり意味がない。
  • 過去に自分が上司から言われてモチベーションが上がったり、下がったりした言葉を思い出して、言葉のパワーを感じてほしい。
言葉の有効性は、解釈や人間関係に左右される


ここまでを考えると、単純に言葉だけに焦点を合わせても、モチベーションの向上とか、チームのパフォーマンスの向上という本質的な問題の答えは得られないことがわかる。言葉が大きなパワーであり、モチベーションを左右させる重要な要因だと認識することは最初のステップである。

次のステップでは、より大きな視点、すなわちコミュニケーションの仕組みという視点で考えていく。

コミュニケーションの問題がプロジェクトの失敗を招く
  • コミュニケーションがうまくいかないと、無駄な仕事をしたりやり直しになたり、必要な仕事を実施していなかったりする事態を招く。それは、プロジェクトを失敗に向かわせる力になる。最初は小さなミスにしか過ぎなくても、大きなミスに拡大していくことも少なくない。
コミュニケーションのプロセスとは
  • 「コミュニケーションが良い」→「情報が適切に伝達されている状態」
  • 「コミュニケーションが悪い」→「情報が適切に伝達されていない状態」
  • 情報のやりとりのプロセスは次のとおり。(概念)


  • 「できるだけ」や「なるべく早めに」など曖昧な表現はNG。「遅くとも明日までに」など具体的にすることが大切。
大事なのはフィードバック


情報の受け取り手が自分の理解について?のフィードバックを行えば、送り手の真意を確認でき、ミスを確実に防止できる。つまり、コミュニケーションでのポイントはフィードバックにある。

チームとは、信頼がまず最初に来る
  • チームメンバー同士の信頼関係がベースにあれば、良いチームワークや適切な相互依存関係を構築でき、プロジェクトチームのパフォーマンスは向上する。
  • コミュニケーションは、ノーマルな状態でも誤解の可能性が多々ある。チームに信頼関係がないと、それがもっとひどくなる。
  • 信頼は、大きく分けると次のような3つがある。
    • 個人的信頼 : 正直、約束を守るなどの高い倫理性
    • 専門的信頼 : 専門性があり、自分の見解を確かな情報で裏付けできること
    • 構造的信頼 : 個人的な目的や利害の影響のない人、中立的な立場の人であること
個人的信頼と専門的信頼を高める
  • 構造的信頼は自分ではコントロールできないから、信頼関係を築くには、個人的信頼と専門的信頼を増すしかない。
  • 個人的信頼は、
    • 自分がコミットした(約束した)ことを守ること。自分のコミットしたことを守れるかどうかは「責任感」に関係する。
    • 約束した仕事のできない理由は、いくらでも生じる。責任感が強い人は、理由に関係なく約束を達成できるように努力するし、結果もついてくる。
    • プロジェクト業務でいう「責任感」というのは、他のメンバーに対する真剣な約束であり、パフォーマンスの高いチームを構成する上で、一番重要な要素。
    • 責任感とは、各人の内部から生じるもので、他の人からは与えることができないもの。


プロジェクトマネジャーとしては、責任感を本人の内部から生じるように働きかけることに焦点を合わせることが必要。

  • そのためには次のようなやり方がある。
    1. 責任感は、チームのパフォーマンスを向上させることになる、という認識を確認する。
    2. 仕事上での、他のメンバーとの関連を明確にする。
    3. メンバー全員で仕事での結果を出すことに、意識を合わせる。
    4. プロジェクトの途中で達成したことを、正しく評価する。
  • 専門的信頼は、
    • 自分の担当に関して遂行できる専門性から生じる。
    • 最初から十分でない場合もあるだろうが、チームに対しての責任を自覚することでいくらでも吸収し、身に付けることが可能。ここでも、責任感がキーワードになる。
信頼を築くには、責任を明確に説明する必要がある
  • 信頼を築くためには、業務遂行に関しての責任を持った行動が不可欠。
  • プロジェクトマネジャーは、自ら責任を持って業務遂行することの重要性を、メンバーに態度で示すことが大切。
  • 責任感とは何か、そしてプロジェクトチームでのパフォーマンスにそれがどれだけ大きな影響を与えるかを、メンバーに説明していくことも重要。
  • プロジェクトを遂行していく上での、各自の自分の責任は何であるのかをきちんと認識しないと、信頼関係を他のメンバーと構築することは難しくなる。
  • メンバーは自分の責任が何であるのか不明確な場合は、プロジェクトマネジャーに相談すべきだし、プロジェクトマネジャーも各人が何に対して責任があるのかを明確にし、コミットメントをもらうようにしておく必要がある。
責任範囲と作業範囲の違いを意識する
  • プロジェクトには、不確実性がつき物。よって、チームのメンバーの作業内容も往々にして変化していく。
  • 作業範囲だけを決めていると、「これは私の仕事ではない」とか「今まで言われていない」などと仕事をお互いに押し付け合う事態が生じる可能性がある。
  • 上記状態は、細分化したたくさんの作業をひとつひとつ割り当てることに気を取られ、責任範囲、つまり何に対して責任を担っているのかが曖昧なときによく起きる。


プロジェクトマネジャーは、「あなたの作業は何です」と指示するだけでなく、「あなたは○○について責任があります」と話しておくべき。メンバーもそう考えるべき。

本章では、「言葉のパワー」「コミュニケーション」「信頼関係」「責任」に目をむけ、それらとモチベーションとパフォーマンスとの関係を論じてきた。ここで、モチベーションに関する古典的な理論をいくつか紹介し、チームのパフォーマンス管理にどのように活用できるかを検討する。

マクレガーのX理論・Y理論
  • X理論では、人間は本来怠け者であり、責任を負うことを好まず、安全・安定を望むと想定する。
  • Y理論では、逆に人間は正しい環境が与えられれば、仕事を行うのを望むものであり、適切に動機付けされていれば、自立的、かつ想像で気に仕事をすると想定する。


  • X理論を信奉するマネジャーは、仕事を細かく管理し、統制していこうとし、メンバーを信頼できないと考える。
  • Y理論を信奉するマネジャーは、メンバーに適切な目標を与え、責任を適切に付与すれば、メンバーは自立的に仕事の目的を達成しようと努力すると考える。


プロジェクトチームは、それぞれ違った個性・能力を持つメンバーで構成されているため、同じ理論を全員に当てはめるのは適切でない。


まずはY理論を適用できるのであれば適用し、それがうまくいかなければ、そのメンバーが成熟するまでは教育的に指示・統制というX理論を適用する、という方法がいいと考える。つまり、メンバーに応じて柔軟に対応する必要があるということだ。また、Y理論が適切なメンバーに、気付かずにX理論を適用して、指示・統制していないかチェックするべし。

マズローの欲求5段階
  • マズローは人間の欲求を次の5段階で説明している。


  • プロジェクトマネジャーは、次のようなステップで考えることで、このマズローの理論を応用できる。


1.メンバーは今、5段階のどの状況を望んでいるか
2.このメンバーのモチベーションを上げるには何が役に立つか
3.そのために何を自分は提供できるか

ハーツバーグの意欲要因・環境要因論
  • ハーツバーグは、仕事に関連して人間が欲求を抱く際の要因を次の2つに分類している。
    • 1つ目は、「環境要因(衛星要因)」。これは会社の福利厚生、給与、上司のマネジメントのあり方、作業環境、作業条件など仕事そのものではなく、仕事を遂行していく上での環境、条件を指す。
    • 2つ目は、「意欲要因(動機要因)」。これは茶連人具な仕事、仕事から得られる充足感、専門的成長の喜び、仕事自体の達成感などを指す。


  • これはメンバーのパフォーマンス向上策を、2つに分けて考えるのに役立つ。
  • 環境要因は不満要因とも言われ、人が何か不満を持っているときは、これが原因であることが少なくない
  • いくら、不満要因を解消しても、意欲要因を向上させないと、モチベーションは上がってこない。
  • プロジェクトマネジャーは次のことを念頭に置いて、メンバーのパフォーマンスを検討するとよい。


・パフォーマンスの高かったメンバーが、急にパフォーマンスを落とした理由は、環境要因か意欲要因かを考える
・メンバーのパフォーマンス向上策を、2つの視点で計画する

ロックの目標設定理論
  • ロックは、人は目標自体を達成したいという欲求があると述べている。
  • 努力すれば目標がたっせいできるならばやる気が上がるが、あまりに難しすぎたり、逆に簡単すぎたりした場合にはやる気が出ない。
  • ゴール(達成目標)自体でモチベーションが変わることに注目し、次のような目標設定がモチベーション向上にとって重要だとしている。


1.明確な目標
2.意味のある目標
3.難しいが、達成できる目標

  • 簡単すぎず、かつ難しすぎない業務を割り当てるように計画するのが適切。


Column1 「指導する」と「教える」との違い
  • リーダについて「指導する」ことと「教える」ことの違いは次のとおり。


リーダーの役割は文字通り指導する(指し示し、導く)ところにある。教える(正解を与える)ところにあるのではない。

  • プロジェクトマネジャーはリーダーである必要もあり、指導していくこと(リード)が中心になる。

  • プロジェクトマネジャーより、チームのメンバーの方が多くの知識やスキルを保持している場合も多くある。このとき、メンバーから教えてもらうときに、赤面したり不愉快になってはならない。
  • プロジェクトマネジャーは、チームのメンバーより全ての点で知識が上であるという理由で選定されたのではなく、指導するため、つまりリーダーとしてチームを導いていくために選定されたと認識すべき。

第4章.チームとしてのパフォーマンスを向上させる


チームとしてのパフォーマンスとは何なのか?

ハイパフォーマンス・チームの特徴とは何か?

どのようにして作り上げていくのか?

個人の生産性とチームの生産性
  • プロジェクトは普通、1人で遂行するのもではない。1人でできないから、複数の人で業務を分担し、遂行していく。
  • 難しいのは、個人の生産性(パフォーマンス)の合計がそのままチームの生産性になるわけではないということ。


例えば、通常5の生産性を持った人間が10人でチームを組んでプロジェクトを遂行したと仮定する。人間の生産性が機械のように変わらなければ、チームの生産性は50になる。しかし、人間の生産性は変動する。25になる倍もあれば、100になる場合もある。

  • 俗に言う「ノッてる」状態は生産性(パフォーマンス)が高いとき。
  • 意識すべき点は、チームメンバーがそれぞれ独立した存在ではなく相互に影響を及ぼしているという相互依存関係。


チームの生産性を向上させていくには、ひとりひとりの生産性と同時に、チーム全体の生産性についての視点が必要となる。プロジェクトが難しくなればなるほど、チーム全体の生産性(パフォーマンス)についての視点が重要になる。

  • 上記のようなイメージは、ハイパフォーマンス・チームの特徴としてはありえる。しかし、必要不可欠な要素ではなく、現象の一側面にしか過ぎない。
  • ハイパフォーマンス・チームとは、その言葉の通り、パフォーマンス(生産性)が高いチームを意味する。つまり、プロジェクト遂行で、高い成果を生み出しているチームのこと。
  • 「高い成果」とは次のようなことが考えられる。


高い成果=プロジェクトの計画通り、またはそれ以上の成果が出ている状態

  • 逆に、プロジェクトが良い状態に進むようにチームが機能していないと、いくら優秀なメンバーが集まっても、ハイパフォーマンス・チームとは言えない。
  • プロジェクトの遂行の途中でパフォーマンスを測定し、修正が必要であれば、適切な対応を行う必要がある。
  • チームのパフォーマンスについて、これまでの内容を整理すると、


ハイパフォーマンス・チームとは、生産性の高いチームのこと。パフォーマンスは成果で判断される。プロジェクトの終了時ではなく、途中で評価が必要。パフォーマンスは一定でない。

将来に向けて正しくコントロールできることがカギ
  • 途中経過がいかに順調であっても、プロジェクトが成功したとは当然言えない。
  • 重要なのは将来への視点。チームが将来に向かって、プロジェクトを正しい方向にコントロールできているかどうか、という点が重要になる。


ハイパフォーマンス・チームとは、プロジェクトの計画通りに対して予定通り、またはそれ以上の成果を出しており、将来にもプロジェクトを成功に向けてコントロールできることを確信できる状態のチーム。

  • 現状で、予定よりも遅れていて上がっている成果も低いが、チームがうまく機能していて、遅れを取り戻しつつあるプロジェクトチームはどうか?このようなチームもハイパフォーマンス・チームと呼べる。ここまでの成果の絶対値ではなく、ベクトルの傾き、あるいはチームの加速性も重要な視点。
  • さらに上記視点を取り入れると、


ハイパフォーマンス・チームとは、プロジェクトを成功に向けてコントロールできている、またはできると確信できるチーム。現在の成果も大切だが、それ以上にプロジェクトの最終的な成果(=成功)のための将来への視点が、より重要である。

チームのパフォーマンス変化とプロジェクトの結末
  • プロジェクトチームのパフォーマンスが、プロジェクト期間を通して一定であることはめったにない。期間が長かったり、難易度や複雑性が高いほどチームのパフォーマンスは変化する。


プロジェクトチームのパフォーマンスは、一定でなく変化する。チームのパフォーマンスを把握して、成功に向け修正する必要がある。
「チームのパフォーマンスは変化する」という認識が不可欠。

  • 次の2つの作業が必要
    • 現在のパフォーマンスの状況把握
    • 将来のパフォーマンスの予想

次に、チームのパフォーマンスの測定方法について検討していく。まずは、ハイパフォーマンス・チームの特徴から見ていく。

ハイパフォーマンス・チームの特徴とは
  • パフォーマンスの消化に重要な意味を持つ要素を以下に列挙する。
    1. プロジェクトが計画通りにコントロールされている
    2. チームの目的、目標が明確で共有されている
    3. 成果志向での行動
    4. 自分のことよりもプロジェクトの目的達成を優先させる
    5. 仕事に対する責任感がある
    6. メンバー間に信頼関係がある
    7. メンバー間の相互依存がある
    8. 躍動感がある
    9. 情熱がある

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  • これらを4つに分類する
    • A:プロジェクトがコントロールされている結果・・・1
    • B:プロジェクトの成功に向けた取り組み・・・2.3.4.5
    • C:メンバー間の関係・・・6.7
    • D:観察されるチームの状況・・・8.9

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  • 逆に、パフォーマンスが低下した状況は以下の通り。
    1. プロジェクトが計画から大幅に外れており、コントロールされていない
    2. チームの目的、目標が不明確で共有されていない
    3. 成果志向からはずれた行動をしている
    4. 自分のことをプロジェクトの目的達成よりも優先させる
    5. 仕事に対する責任感がない
    6. メンバー間に信頼関係がない
    7. メンバー間の相互依存がない
    8. 停滞感に覆われている
    9. 情熱がない

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将来、プロジェクトがコントロールできるか否かは、チームメンバーのプロジェクトへの取り組み方やメンバー間での関係を見れば予測できる。

チームのパフォーマンスを評価する2つの基準
  • 1つ目は、客観的な基準。スケジュール、コスト、品質などの結果で評価する方法。
  • 2つ目は、プロジェクトチームを観察して評価するやり方。評価基準は、責任感・相互依存関係・信頼関係の有無など。次のような視点で観察する。
    • プロジェクトの目的や目標を把握していて、コミットしているかどうか
    • 成果を出すことに集中しているかどうか
    • プロジェクトの目的達成を優先させているかどうか
    • 仕事に対する責任感があるかどうか
    • メンバー同士、相互に効率的な業務依存ができているか
    • メンバーの話すことや行動が信頼できるか、信頼されているか
    • 躍動感や情熱があるかどうか
  • プロジェクトの進捗が遅れていたり、コストがコントロールできていないという結果が現れているとき、上記の評価項目に照らして検討すると、その原因が見つかることがある。
  • 進捗が計画通りであったとしても、責任感が欠如していたり、メンバー間での信頼関係がなかったりすると将来的に、納期遅延や予算オーバーなどの致命的な問題をプロジェクトに与える可能性がある。
  • チームのパフォーマンス評価はプロジェクト期間中、定期手kに実施する必要がある。それが変化するものであるという点を意識することが、プロジェクトを成功させていく上で重要。

ここからは、ハイパフォーマンス・チームにしていくためにはどうしたらいいかという点について検討していく。

チームの形成過程と、各段階でのプロマネの適切な対応とは

1.Forming(チームの形成)

  • このプロセスは、「自分はどうしてメンバーに選ばれたのだろうか」「役に立つのだろうか」「何を期待されているのだろうか」と、不安を感じている段階と言える。
  • この最初の段階では、プロジェクトマネジャーが心がけるべきことは次の通り。
    • プロジェクトの目的を明確に伝える
    • メンバーの役割、期待していることを明示する
    • メンバー間の依存関係を明らかにする
    • メンバー同士を知り合える環境を提供する
    • チームのルールを作る

2.Storming(嵐の状態)

  • 自分の責任範囲や権限、あるいは思い込みなどにより、他のメンバーとの間のコンフリクト(衝突)が起こる段階。
  • この段階で大切なことは、コンフリクトを無理に押さえ込まないようにすること。「我々は大人なのだから、チームとして協力し合う義務がある」などと話すことは、効果的ではない。
  • コンフリクトをうわべだけ押さえ込んでも、プロジェクトの長い期間に渡って、ゲリラ戦のような抵抗に遭うことになる。


この嵐の状態は自然な反応だ、と意識することが大切。

  • この段階で、プロジェクトマネジャーが心がけるべきことは次の通り。
    • メンバー間のコンフリクトは、次の成長のために必要な当然のことと考える
    • コンフリクトをうわべだけ無理に押さえ込まないようにする
    • メンバーと向き合って、本質的な問題解決を心がける
    • プロジェクトの進め方についてのコミットメントをとる

3.Norming(規範)

  • この規範の段階は、嵐の状態が過ぎて、チームとして機能を始めた段階。
  • 台風が過ぎた後のように、さわやかな状態といえる。
  • 「私は」という状態から「私たちは」という帰属意識が形成されてきた状態。
  • この段階で、プロジェクトマネジャーが心がけるべきことは次の通り。
    • メンバー同士が能力を最大限に発揮できるようにサポートする
    • チームとしての意識を尊重する

4.Performing(高いパフォーマンス)

  • 高いパフォーマンスの段階は、規範の段階がさらに進んで成熟した段階。
  • チームのプロジェクト業務に対するパフォーマンスが、最も高い状態。
  • この段階で、プロジェクトマネジャーが心がけるべきことは次の通り。
    • チームの達成した成果を祝う
    • チームがより効率的、効果的に業務が遂行できるようにサポートする
    • チームメンバーの責任範囲を拡大する
    • チームメンバーの業務範囲を多くする

5.Adjourning(解散)

  • この段階は、プロジェクトの所定の成果物を作り終え、チームが解散していく段階。
  • この段階で、プロジェクトマネジャーが心がけるべきことは次の通り。
    • メンバーの不安を解消するためのサポートを行う
    • メンバーとプロジェクトでの成果を祝福する

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↓↓↓


全てのチームは、形成、嵐の状態、規範、高いパフォーマンス、解散のプロセスを同じように移行していくのだろうか?プロジェクトの終了近くまで嵐の状態の場合、どうしたらいいのだろうか?できるだけ早く高いパフォーマンス(Performing)の状態にするにはどうしたらいいか?
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  • プロジェクトチームの進行プロセスを自然に任せると、嵐の状態のままプロジェクトが失敗して終了することになる確率が、かなり高くなる。
  • 今まで仕事を一緒にしたことがほとんどないメンバー同士で編成されたチームの場合、自然ななりゆきに任せてしまうのは、目隠しをして車を運転するようなもの。運頼みになる。
  • プロジェクトマネジャーはできるだけ早く嵐の状態を脱し、高いパフォーマンスの状態にまでチームを作り上げていくような対策を行うことが、プロジェクトの成功のために重要。

ここから先は、そのための方法を検討していく。

チームビルディングのステップ
  • 「チームビルディング」→「高いパフォーマンスのチームを作り上げていく能動的な活動」
  • 以下の順番に3段階に分けて考える。
    1. 個人の集合 : まだ自分のことを優先されており、プロジェクトチームは構成されているが、自分中心の段階。
    2. グループ : プロジェクトマネジャーの指示に従うものの、まだ自発的に行動を取らない段階。
    3. チーム : お互いに相互依存関係にあり、プロジェクトの目的に沿って、遂行していて、真のチームと呼べる段階。
チームビルディングを行うのに必要なこと
  • チームビルディングでは、チームの状態を「個人の集合」から一気に「高いパフォーマンス」に引き上げるのではなく、まず「グループ」と定義されている状態まで持っていくこと。

1.プロジェクトのビジョンを明確にする

  • ビジョンとは、プロジェクトの最終状態のイメージ。方向を明確にしてくれるもの。
  • ビジョンを共有しておけば、チームメンバーは自分の役割やチームの必要性の再認識を行うことができる。

2.目標達成のアプローチをチームで検討し、共通の理解を持つ

  • チームがどのようにしてプロジェクトに与えられた目標を達成したらいいのか、その方法を検討していくことで、メンバーそれぞれの役割の理解と認識が深まり、責任感やコミットメントが自然と出来上がっていく。
  • プロジェクトマネジャーは、メンバーそれぞれに仕事を割り当てるだけでなく、チームがプロジェクトの目的を達成する上でアプローチをメンバー同士でいろいろと検討し、最善と思われる方法を採用することが非常に有効。

3.オープンなコミュニケーションを行う

  • コミュニケーションには公式/非公式両方がある。
  • 非公式のコミュニケーションの重要性を、メンバー各自が認識する必要がある。
  • そのためには、オープンなコミュニケーションがでいやすいムードを作ることが大切。

4.プロジェクトマネジャーの適切なリーダーシップの発揮

  • プロジェクトマネジャーは状況に応じた適切なリーダーシップを発揮する必要がある。
  • 「適切な」とはプロジェクトチームの成熟度やプロジェクトの状況に応じた対応を行うことを意味する。

5.プロジェクトのルールを作る

  • 「挨拶をしよう」や「会議では必ず発言をする」などマナー的なもの。

チームビルディングはいつから実施したらよいか?

キックオフミーティングの重要性
  • チームビルディングの実施はいつから?→「キックオフミーティング」だ。
  • 準備が必要。プロジェクトマネジャーはメンバーのモチベーションが上がるように説明する準備をすべき。
  • 内容の例としては以下のようなもの。
    1. プロジェクトメンバーとして選ばれた理由の説明
    2. プロジェクトメンバーの紹介
    3. プロジェクトの概要(目的、ビジョン)の説明
    4. メンバーとして期待されていること
    5. プロジェクトの決まりごと、詳細内容などの説明と質疑
メンバーのパフォーマンス低下時の確認リスト
  • メンバーのパフォーマンスがあがらない場合には、以下の点からチームの状態をチェックしてみては。
    • プロジェクトの目的を明確にメンバーは理解しているか
    • プロジェクトマネジャーとメンバー、またはメンバー間、チーム外とのコミュニケーション方法は適切か
    • メンバーの物理的な距離は適切化(離れすぎていないか)または、物理的距離による問題は何か
    • プロジェクトのビジョンは明確で、十分理解されているか
    • メンバーに隠れた不満があるか、それは何か(個別にヒアリングする)
    • メンバーに業務に対する熱意は感じられるか。ないとしたら理由は何か
    • プロジェクトメンバーが効率的・効果的にプロジェクトを遂行する上で必要な、権限や責任が割り当てられているか
パフォーマンス向上対策は原点に戻って


原点・・・「プロジェクトチーム各人は、プロジェクトの目的を与えられ、それを達成するために集まったメンバーであり、プロジェクトの目的を達成することに集中すべきである」

  • プロジェクトマネジャーをはじめメンバー全員が、プロジェクトの目的は何か、成功したらどのようなことが社会や会社に起こるのか、などのビジョンを再確認し、仲間として信頼しあうことの大切さ、楽しさをかんじること。
  • 「信頼し合おう」といくら言っても、信頼感が生まれるものではない。チーム内の信頼感も、毎日の仕事を通じてしか育成できないもの。
  • チームは困難な状態を克服するたびに強化される、という性質がある。


プロジェクトの成果を出すことに焦点を合わせ、成果を上げることで信頼関係や責任感を育成していく、正のスパイラルに持っていくようにすることが最も大切。

最後に、陥りやすい落とし穴の紹介。

和を強調するチームの落とし穴
  • プロジェクトチームでは、見かけ上の和は重要ではない。
  • 表面上仲良くやっている振りをしているグループは活気がなく、創造性が出てこないもの。
  • お互いに言いたいことも言えずあきらめきっているチームは、個人の成長もなく、チームとしてのパフォーマンスも高くない。
  • 逆に、ガヤガヤ騒いでおり、はたから見るとケンカしているように見えても、根本でつながっていることもある。


見せかけの和と本当の和では、チームのパフォーマンスで格段の差がある。見せかけの和は、お互いのコンフリクトがないことを目的としているのに対し、本当の和は、プロジェクトの成功を目的としている。前者は自分それぞれを守ることにエネルギーを使うのに対し、後者はプロジェクトを成功させるのに必要な行動を優先させるのにエネルギーを使う。

この違いは、「信頼関係」の構築ができているかどうかに関係している。自分が嫌われたくないとか、目立ちたくないとかいう理由で率直に意見が言えないのは、相手がどのように思うのか、感じるのかに意識が向いており、自分の防衛のために実質的な沈黙をしていると言える。

逆に何を言っても、それが個人攻撃でなく、プロジェクトの成功にとって良いことと信じて話し、相手もそのようにとらえてくれると信じられるチームの場合には、思ったことを率直に言えるもの。これは、信頼関係が構築されている理想の姿と言える

プロジェクトの最初の段階で、プロジェクトマネジャーが「みんな仲良く」を強調しすぎると、メンバー同士が言いたいことを言えない状態になり、表面的にはわが保たれているように見える状態になることがある。それは自然な状態ではない。

第5章.組織が提供すべきサポートとは

※読み飛ばし・・・

第6章.「本物」のプロジェクトマネジャーになる

優秀さと本物の違い
  • プロジェクトマネジャーになるのは、特に難しいことではない。
  • 優秀なプロジェクトマネジャーと本物のプロジェクトマネジャーとは、何が違うのか?
  • 「優秀」という言葉には他のものとの比較の上でより優れているという意味がある。
  • 「本物」といのは本質的・独立的な、他との比較ではないもの。 ・・・「本物の愛」はあっても「優秀な愛」はない。


他のプロジェクトマネジャーとの比較ではなく、独立した個人としての「本物さ」が、今一番必要である


プロジェクトマネジャーとしてどのよいうに考え行動したら本物のプロジェクトマネジャーになれるかを、さらに検討していく。

予期せぬ「サプライズ」に対応できる能力
  • プロジェクト遂行中に、予想もしなかったサプライズが起きることがある。
  • 予想外のことが起き、「プロジェクトが混沌とした、今のままでは失敗してしまう」と感じたときにこそ、プロジェクトマネジャーの真価が問われる。
  • 全てが順調な時には、誰がプロジェクトマネジャーであっても、極論すればプロジェクトマネジャーがいなくても、プロジェクトはうまくいく。
本物のプロジェクトマネジャーに必要なもの
  • 先手を打つことで問題発生の確率を下げることができ、それだけサプライズは減り、プロジェクトの成功確率は向上する。
  • 上記と同時に問題発生時の対応力も重要になる。

↓↓↓
これには、プロジェクトマネジャーの人間的要素がとても重要になる。


本物のプロジェクトマネジャーとは、どのような状況、環境の中でもプロジェクトの成功に向け、チームと共にプロジェクトを遂行できるプロジェクトマネジャー。

  • 本物のプロジェクトマネジャーには、次の2つのことが要求される。
コストと効果を秤にかけて適用程度を見極める
  • プロジェクトマネジメントについて本質的な考え方と様々な手法は身につけておかなければならない。こうした手法は、プロジェクトという「生もの」を料理する道具やレシピのようなもの。何かの理論から出来上がったものではなく、過去の人類の経験の積み重ねによって生み出されてきたもの。
  • プロジェクトマネジメントを学ぶということは、過去の人類の知恵や骨格を身に付けることと言える。
  • プロジェクトマネジメントはプロジェクトに対して柔軟に適用するよう意識することが必要。
  • 不確実性が高いプロジェクトとそうでないプロジェクト、関係者の数が多いプロジェクトとそうだいプロジェクトなど、プロジェクトの特性や不確実性やサイズで、適用を柔軟に変えることも大切。
  • プロジェクトマネジメントの適用には、工数やコストが必要である。
プロジェクトマネジャーの人間力とは何か
    • プロジェクトマネジメントは人を介して進んでいくもの。-プロジェクトマネジャーには、人間力が必要となる。


プロジェクトマネジャーに必要な人間力とは、ステークホルダーに適切な影響力を与え、プロジェクトの成功に向けた行動を関係者が行うように仕向ける力である。

  • プロジェクトで重大な問題が発生したときに、問題に適切に対応してプロジェクトを成功させることができるかどうかは、プロジェクトマネジャーの「人間力」に大きく依存する。
  • 人間力の構成要素としては、効果的なコミュニケーション、ネゴシエーション、リーダーシップなどいろいろある。ただ、注意すべきは、これら自体が目的ではないこと。目的はあくまでプロジェクトの成功。
    • コミュニケーションが大切なのは、適切なコミュニケーションが図れることで、問題を未然に防いだり、発生した問題の解決策を見つけたりできるから。
    • リーダーシップが重要なのは、プロジェクト関係者にプロジェクトの成功に向けた行動を取らせることができるから。

↓↓↓


逆に考えると、いくらコミュニケーションを十分に図っているとか、リーダーシップを発揮していると感じても、実際に関係者がプロジェクトの成功に向かって適切な行動をとっていなければ、「人間力」があるとは言えない。プロジェクトマネジャーの人間力とは、成果から考えることが大切になる。

人間力の構成要素とは
  • ボスナーのアンケート結果(Leadership Challenge)として、賞賛されるリーダーの特徴として、上位4つは次のもの。
    1. Honest(正直さ)
    2. Forward-Looking(前向き)
    3. Competent(有能である)
    4. Inspiring(奮い立たせる)
  • 「正直さ」
    • 単に個人の倫理観の領域だけでなく、メンバーに好ましい影響を与える。
  • 「信頼できる」
    • プロジェクトマネジャーは、顧客、上司、メンバーやステークホルダーから、信頼される必要がある。
    • 前述の「個人的信頼」「専門的信頼」を高めていくことが大切。
    • 「個人的信頼」・・・”変えるのが難しい部分。とはいえ、約束を守る”という責任感に帰着する。
    • 「専門的信頼」・・・開発プロジェクトで新しい技術を使うなどで、プロジェクトマネジャーが常に全ての技術的なことを知っていることは少ない。そんなときも、技術的なことに関しては他の専門家の協力を得たり、アドバイザーとしてサポートしてもらうなどの方法で、専門的信頼を増すことができる。
  • 適切なコミュニケーションを図る。
    • プロジェクトマネジャーの主要な死後とうぁ、効果的なコミュニケーションをメンバーやステークホルダーとの間で図ること。
    • 適切なコミュニケーションを図るためには、2つの要素、文書と口頭を適切に組み合わせることが大切。文書は口頭に比べて作成に時間はかかるが、誤解を防ぐという点では、口頭よりも優れている。ただし、文章力がないと、逆に何が言いたいのか分からなくなったり、理解に余分な時間を要したりする。口頭は自由に話すという気楽さがあり、臨機応変に内容を変えたり、追加したりが可能。
    • 口頭は感情も良く伝わる。責任がない発言をしたり、互いの理解違いや記憶違いが起こったりなどの欠点がある。
    • それぞれの良い点を組み合わせることでコミュニケーションが円滑になる。
    • コミュニケーションを効果的に図るには、「よく聞くこと」も大切。


プロジェクトの失敗の一番の原因はコミュニケーション不足である、とよく言われる。適切なコミュニケーションには、それだけ時間を割く必要がある。

  • 責任感がある
    • チーム運営の方針が、指示型でも委任方でも「プロジェクトの責任は自分にある」という自覚が必要。
    • プロジェクトの成功という最終的な責任が、プロジェクトマネジャーにはある。
    • 「プロジェクトには予期しないこともある。今から何ができるかを考えよう」。つまり、すでに発生したことはいくら考えても過去には戻れないので、、思考を次のステップに切り替えて、それに集中すること。
    • 本当の失敗は、「自分に対する自信をなくすこと」
  • 結果志向(目的指向)
    • プロセスは結果を出すためのもの。
    • これまで「プロセスを大切に」という議論だった。「プロセスを大切に」は結果を出すためのもの、良い結果が生まれるように変更していくもの。


プロジェクトは結果が重要。

    • 常に最善のプロセスであるかどうか見極め、必要だと判断したら改善していくことが大切。
  • 正しい意思決定ができる。
    • プロジェクトでは、十分な検討を行う時間や情報がない中で、意思決定をしなくてはならないこともある。情報が不十分で不確実性がある中で考えを尽くし、自分で判断を下すことが重要。
    • 意思決定を行う際は、常にいくつかの選択肢を考慮して決める必要がある。そのためには、複数の選択肢を用意する必要がある。
    • 我々人間は、どうしても過去の経験や環境で考える範囲が決まってくる。そのため、1人で考えられることには限界がある。そういう意味で、メンバーや関係者の意見や考えに耳を傾けることは重要。その上で、意思決定を行うのが、プロジェクトマネジャーの仕事。
    • まず「決める」という行為が必要。修正は後からでも可能。曖昧なままにしておくことのほうが、経験的に問題が大きくなることが多い。
  • 適切なネゴシエーションができる
    • ネゴシエーションで長期的に好ましい方法は、Win-Win
    • プロジェクト基幹を通して生じるコンフリクトの3つは、スケジュール、プロジェクト間の優先順位、リソースといわれている。プロジェクトマネジャーはこれらに関して、交渉を行う機械が多い。
    • プロジェクトマネジャーになれば自由組織のリソースを使えるということはない。自分のプロジェクトを成句に導くには、必要な要請を組織にきちんと説明したり、協力を取り付けたりするための交渉力は必要。
    • ここでいうプロジェクトマネジャーに必要な交渉力の源泉は、責任感と熱意、勇気、実績に基づく信頼や評判、確かなデータに基づく定量的説明、組織の上層部からのサポートなど。
    • ネゴシエーションには「分配型交渉:全体のパイの大きさが一定で、自分の取り分を大きくするための交渉。Win-Lose」「統合型交渉:協力や情報の共有を通して互いの主要な目的を達成できる、またはそれ以上の価値を生むための交渉。Win−Win」。プロジェクトマネジャーにとって重要なのは、「統合型交渉力」の能力。
  • 柔軟性がある
    • 計画通りに遂行できるプロジェクトは、ほとんどないだろう。もし、計画通りにいくとしたら、不確実性の小さいプロジェクトか運がよかったかのどちらか。
    • プロジェクトマネジャには、「変更しない」ということを「揺るぎない」とか「信念がしっかりしている」と同じ意味に思っている人がいるが、変更するほうが望ましいと判断したなら変更する、柔軟性や勇気が必要。
    • あくまでプロジェクトの成功が目的。
  • コンフリクトを恐れない
    • プロジェクトマネジャーは、プロジェクトにコンフリクトは付きもので、全員賛成などありえないと考えること。
    • プロジェクトの成功に必要だと思われるコンフリクトからは逃げないで、正面から立ち向かう勇気が必要。
    • コンフリクトがあると、自分の内面でかなりのエネルギーを消耗するが、新しい価値を生み出すことにつながっていることもある。結果として、自分を成長させてくれることになる。
  • ユーモアがある
    • 適切なユーモアは、過度な緊張感を緩和させてくれる。
  • ハッピーエンドの映画監督
    • プロジェクトマネジャーは、ハッピーエンドであることを関係者にイメージできるようにし、それに向かって頑張るようにもって良く、映画監督のような意識が大切。
    • プロジェクトメンバーや関係者は、いわば映画の登場人物。今は、大変でも、最後がハッピーエンドだと思えば乗り越えられるのではないだろうか。
  • モチベーションを考える
    • プロジェクトマネジャーは、チームの生産性(パフォーマンス)向上に注意を払う必要がある。
    • モチベーションの下がったメンバーのモチベーション向上は、個人やチームのパフォーマンス上でも重要なこととなる。モチベーションを上げるよりも、モチベーションが下がっている原因を特定して対応を考える方がよいケースが多い。
  • 気概がある
    • プロジェクトマネジャーはプロジェクトを成功させようという「気概」が欠かせない。
    • 気概を養い上で、急速をとることも仕事だととらえ、戦略的に時間を使うことが大切。
    • プロジェクトマネジャーのイライラや精神的な不安定さを、メンバーは敏感に感じるもの。
  • 権限委譲ができる
    • 責任と同時に権限も委譲するよう忘れないことが大切。
    • 権限委譲は与えるものではあるが、経験上、やる気のあるメンバーはプロジェクトマネジャーの信頼を勝ち得て、自ら権限を取得するくらいの意気込みがある。
  • リーダーシップがある
    • プロジェクトマネジャーはチームのリーダー。よって、リーダーシップが必要。
リーダーシップで重要なのは結果
  • リーダーシップの本質には、次のような3つの特徴がある。
    1. 任命書で与えることができない。
    2. 1人では発揮できない。
    3. それ自体が目的ではない。
  • 任命書で与えることができない。
    • メンバーがリーダーであると認識しないと存在しない。
  • 1人では発揮できない。
    • 他の人との間でしか存在せず、人との関係によって変化する。
  • それ自体が目的ではない。
    • 「○○さんの強いリーダーシップで、困難な状況を脱した」と言ったときには、強いリーダーシップを発揮したことが重要なのではなく、それによって、「困難な状況を脱した」事に意味がある。
    • 「○○さんは強い強いリーダーシップを発揮したが、プロジェクトは失敗した」と言った場合、リーダーシップは適切ではなかった可能性がある。要するに、リーダーシップが適切であったかどうかは、結果から判断されるべきと言える。
リーダーシップの3−1理論
  • すべてのヒューマンスキルは(リーダーシップ、コミュニケーションなど)は、いずれもワーク(仕事)の結果を出すことを目的としている。
  • コミュニケーションやリーダーシップなどのヒューマンスキルはそれ自体が重要な目的でもなく、目的は結果を出すことであり、結果を出すためにメンバーに影響力を与える、という考え方。
  • この理論は、良い結果を出すには、やるべきことをメンバーに実施させ、やる必要のないことを行うのを防ぐ必要があるという考え方がベースになっています。そのためには、3つの要素を組み合わせて結果を出すトレーニングになっている。その3つとは、「パワー」「アイデア」「テンション」。


  • パワー
    • 公式と非公式がある(前述の通り)。
    • 公式のパワーは組織が与えたもので変えることができないが、非公式のパワーは正しい判断を行うとか、モチベーションを向上できる対応を行うなどで、増加させることができる。
    • 非公式のパワーとしては、公平さや正しい判断力、信頼、好感などがある。
  • イデア
    • 正しい判断を行うためには、複数の選択肢が必要となる。
    • 提案したり、逆にメンバーから多くの提案や発送を得る必要がある。
  • テンション
    • ここでいうテンションは緊張感を意味する。
    • どんな状態がパフォーマンスが高いかというと、「やや緊張感のある」状態。この状態を作り出すような行動が、リーダーには必要となる。
    • 全員が緊張していると適切なコミュニケーションもできないし、良いアイデアも出てこない。逆にダラダラしているときもパフォーマンスは高くない。


リーダーシップの本質は、目標になる結果を出すために、いくつかの要素を使ってメンバーをに影響力を与えることと言える。リーダーシップとは、強引に引っ張っていくことや、無理やり従わせることとは違う。結果が大切だからこそ、プロセスを正しくマネジメントする必要があり、それをいしきするところからスタートし、無意識レベルまで定着させることが重要。


まとめ


本物のプロジェクトマネジャーとは、どのような状況、環境の中でもプロジェクトの成功に向け、チームと共にプロジェクトを遂行できるプロジェクトマネジャー。

  • 上記のためには、次の2つが必要。
  • プロジェクトマネジャーにとって、組織の力がなくても必要なサポートは自分から獲得してプロジェクトを成功させるという気概は重要。プロジェクトマネジャーは、狩猟を行うチームの頭。獲物(結果)はどんどん動き回るかもしれない。獲物を捕獲しないと、食べ物にみんなありつけません。獲物は予期しない動きをする。計画は必要だが、メンバー間のコンフリクトやモチベーションの低下など、予想外のこともいろいろ起こる。
  • これがプロジェクト。プロジェクトを任される「本物」のプロジェクトマネジャーになるということは、自分のイメージ(計画)し、それに向けて組織のリソースを使ってプロジェクトを進めることができる、すばらしい機会である。


● プロジェクトマネジャーはプロジェクトの成功に責任があるがゆえに、プロセスに対して適切な対応を行う必要があることを認識する。
● プロジェクトはチームで遂行していくので、チームのパフォーマンスを向上させていくという視点を忘れない。また、そのために戦略的視点を持って行動する。
● プロジェクトの経験を組織に残すと同時に、自分の引き出しとして役に立つ形で整理し、人間力向上のために常に自己研鑽をする。
● 野生に返り、五感をフルに活用する。


チームと共に信頼関係を維持しながら成功に向け挑戦していくことができるかどうかが今、私たちに向けられた挑戦と言える。


以上。